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里山とは、エデンの園のことである。
むかし千年前。
ひとつの故郷がひとつの庭があった。
その庭の小鳥の墓の花壇の中で
雪の中からクロッカスの花が顔を出していた。
ヘルマン・ヘッセ

 

金を稼ぐことが仕事なのではない。
立身出世するために人生があるのでもない。
無名であることを恐れず、自分らしくよりよく生きることが仕事だ。
自然と美しいハーモニーを奏でながら生きることが人間の仕事だ。
実を言えば、アダムとイブはリンゴを食べなかった。
「エデンの園」は、私たちの足元のいたるところに今もあって、
人はそれを「里山」と呼んでいる。
日本の21世紀への答えは、日本の過去のなかにすべてある。
そして多分、世界の未来は、アジアの知恵のなかに…。
バランスがすべてだ。宇宙とは、バランスのことだ。

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里山は昔から農用林として利用されるだけでなく、その地域の人々にレクリエーションの場として、四季折々の行事とともに広く使われて来た。春は山菜摘みや花見、秋には紅葉狩りやきのこ取りといった地域ぐるみの行楽の場でもあった。ひるがえって現在の私たちにとっても、施設過剰の都市公園や観光第一主義の国定公園より、より身近にあって、自然の豊かな「里山・田園公園」として、その利用価値は大変高いものと思われる。
ところが、燃料革命や農業構造の変化などにより、今日ではゴミ捨て場や開発予備地となっている。そこで、使われなくなった里山の自然を活かしつつ、適度の手入れ(管理)をすることで、都市近郊の自然公園として活用することが最も望まれている。一方、身近な生き物の保全を図りつつ「里山の保全と活用」を現実的なものとするには、地域住民市民による積極的な提案や、ボランティアによる管理作業への参加など、その地域の植生や特性にあった活用、管理計画が必要である。構想・計画段階からの市民参加による新しい運営組織をつくることが必要であると思われる。

 

 

 

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